大学生が読むべき10冊

これまでに読んだ1300冊以上の中から厳選して10冊を選びました。

1.「夜と霧」 ヴィクトール・フランクル みすず書房
「事実は小説よりも奇なり」。今の世の中でこの言葉に同意できる人はどれだけいるだろうか。最近のファンタジーアニメやSF小説の中から突飛な設定のものを挙げて、小説の方が現実よりよほど奇妙であると反論を試みる者はいるだろう。ではその人に問いたい。残酷でドラマティックな歴史的事実の方は、どれだけ知っているのか、と。第二次世界大戦中に強制収容所でナチスが為したことは、奇妙という言葉すらヤワだと言わねばならない。言語を絶するといってしまえば簡単だが、それでも敢えて表現するなら、地上の地獄と呼ぶのがふさわしい。そこでの事実は、小説よりも残酷かつ劇的であった。

この本からわかることは、「人間はいかに残酷なことを為すことができるか」だけではなく、極限状況に置かれた人間の生き様からみえてくる、人間の可能性である。著者フランクルもユダヤ人としてアウシュビッツ強制収容所に連れて行かれたが、奇跡的に生還した。彼は自らの個人的な体験をもとにした主張は、平時に暮らす我々の常識を覆す。たとえば、異常な状況においては、異常な反応がまさに「正常」な行動であるということ。「人間とは、すべてに慣れ得るもの」と定義したドストエフスキーの言葉が事実であること。「環境・社会が人間の心を強制的に規定する」という決定論者は間違っており、与えられた事態において、どのような態度をとるか決断する人間の最後の自由は、どんなときでも残っているということ。健康、家庭の幸福、職業的能力、財産、社会的地位、こんなものは、人が再発見し再構成できる「かけがえのある」事物であること。ナチス側の人間にも、善意のある種族もいたことから、スタンフォード監獄実験が暗示するような、職業や階級が人間性を決定することはないということ。

2.「きけ わだつみのこえ」 日本戦没学生の手記 岩波文庫
軽い気持ちで開くには、あまりにも重い一冊。70年前、自分と同じ年齢の若者達(京大生も含む)が、戦争に巻き込まれ、ひとりひとり悩みぬいて死んでいった記録。学校の歴史の教科書には書いてなかった彼らの思い。大学卒業後すぐに徴兵された人達がいた。或る者は、思い切り勉強をしようと思って大学に入り、勉強をしつつあるときに、「ペンを捨てねばならなくなり、代わりに短剣」を持たされた。育った故郷から、親しい人達から離れ、死地に赴く彼らは何を思ったのか。歪んだ軍組織の中で何を考えたのか。厳しい検閲を潜り抜けての恋人・親・親友への手紙のやり取り。出撃前日、死をいかに受け入れたか。

 それらは彼ら自身の手で克明に記述され、後の世に残ることとなった。1945年、8月9日に神風特攻隊員として戦死したひとりの若者の存在を知り、あと1週間飛ぶのが遅ければ、敗戦が来て生き残れただろうに、などとどうしようもないことを思う。運命の絶対感を思わずにはいられない。幸せを感じながら逝くのは難しくないように思う。アランの幸福論にあるように、それは環境が何であれ、自分の心づもり、受け止める努力次第でどうにでもなると信じるからだ。本に登場する彼ら自身も、死を目前に知りながらも、幸せを自覚しているように思える。彼らをかわいそうに思うのは、戦争がなければ経験できた未来を半ば強制的に時代によって奪われた点にある。人生の酸い甘いを十分に堪能する前にそれが終わってしまった。人生をRPGに例えてみよう。自分が主人公のこのゲームでは、経験値・レベルが上がるにつれて、色んなアイテムをゲットし、効用を得ることができただろう。まだ経験していない多くのイベントや、すばらしい人との出会いもあっただろう。世界の様々な場所を冒険することができただろう。

 『世界が正しく、良くなるために、一つの石を積み重ねるのである。なるべく大きく、据わりのいい石を、先人の積んだ塔の上に重ねたいものだ。不安定な石を置いて、後から積んだ人のをも、もろともに倒し、落とすような石でありたくないものだと思う。』 (佐々木八郎、1945年4月14日、沖縄海上で昭和特攻隊員として戦死。享年22歳)現代の豊かな生活が、捨て石となっていった彼らの犠牲の上にあることを忘れない。

3.「幸福について」 ショーペンハウアー 新潮文庫
「世界は享楽されるために存在するもので、幸福を取り逃がすのはこれを物にするだけの腕のない人なのだ」と考える人へ。数ある幸福に関する本の中で一番だと思います。

4.「ゲーテ格言集」 新潮社
読むと精神的に健康になれます。人生経験を増すごとに、彼の言葉の意味が少しずつわかるようになっていく気がするのが楽しいです。

5.社会心理学講義 小坂井敏晶 筑摩書房
超・知的に刺激的な一冊。この人間社会の謎を理解するための、切れ味の鋭い刃物が勢ぞろいしています。一度通読すると事あるごとに、この本で出てくる理論で目の前の現象が説明できそうな気がしてきます。この本を面白いと思えない人は、研究者には向いていないと言っても過言ではないかもしれません。

6.「生きがいについて」 神谷美恵子 みすず書房
何のために生まれて 何をして喜ぶ わからないまま終わる そんなのは嫌だ

7.「人生の短さについて」 セネカ 岩波書店
セネカと兼好法師とスティーブ・ジョブスは時代を超えて同じことを言っています。

8.読書について ショーペンハウアー 岩波文庫
「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。」戒

9.「猫楠」角川ソフィア文庫 10.「水木しげる伝 上・中・下」 講談社漫画文庫
どちらもマンガ。南方熊楠と水木しげる、どちらの人生もぶっとんでいて、人間ってこんなふうに生きられるものなのか~と思えます。
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by healthykouta | 2016-02-20 13:17 | 読書 | Comments(0)