話し合い・説得・交渉

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他称理想主義者「雄弁術(自分の主張を相手に説得する技術)は嫌いだ。あらかじめ用意された結論に導かれるのは気に入らない。議論の勝ちに拘って、妥協することは最初から選択肢になく、自説の正しさを疑わず相手に押しつける姿勢が不愉快だ。大声出して怒っているように振る舞うことで、相手を支配しようとするのも嫌いだ。それを話し合いとは呼べない。交渉が雄弁術の応酬に堕ちるのを何度も見てきた。

雄弁術の対極には、弁証法(問答法、ギリシャ語でダイアローグ)がある。不完全な人間は、一人だけでは真理にはなかなか至れない。相手が間違っていると思っていても、自分も真理に至っている保証はない。相手の議論を最後まで聞き、そこに内在する矛盾を指摘し、疑問を投げかけて落ち着いて対話する。そうすれば、お互い自分たちの矛盾に気づいて、内発的に考えを改める。相手から疑問を投げかけられたら、同じように応答する。そうやって相互に発展して、真理に至ればよい。プラトンの本の中のソクラテスほど徹底的に弁証法を行うのは難しいけど、少しでもあれに近づけた方が雄弁術よりはいいと思う。」



自称現実主義者「綺麗事言ってんじゃねえ。交渉の目的が「自分たちの利益の最大化(自分たちの正しい言い分を相手に理解させ認めさせること)」であって、「交渉の結果はどうなってもよいから(片方の主張の棄却であれ、双方の妥協であれ)とにかく建設的な話し合いをすること」ではないのから仕方ない。宇井純(196877)は、水俣病の被害者は、乱入、乱闘という段階を経て大騒ぎしないと、国やチッソから有利な妥結条件を引き出せなかったと指摘している。彼の考えが常に成り立つとしたら、交渉では早々に妥協するよりとにかくゴネた方が最終的に自分たちの言い分が認められやすく得だということになる。交渉において争っているのは「真理」の在り処ではない。双方の「利害」を調整しているだけに過ぎない。」



他称理想主義者「交渉に臨む双方がそれぞれ異なる考えに基づいて「自分たちの利益だけを最大化」しようとしていたら、交渉は不毛な平行線に終始するだろう。ゲーム理論で有名な「囚人のジレンマ」の話を思い出してほしい。お互いが得をするような戦略があり得ると思うんだ。そのゼロサムゲームを超えた状態は、交渉前に自分らだけで考えたアイデアをベストだと信じてその実現に固執するのではなく、双方での建設的な話し合いを通してはじめて発見し得ると思うんだ。私はそれを“交渉における真理”と定義したい。信頼関係がないから対話ができないと言うのなら、まず対話の成立を通して信頼関係を育めばよいではないか。」


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by healthykouta | 2017-04-21 11:02 | Comments(0)